カテゴリ:小説と芸術( 7 )

イギリスの昔の通貨価値が計算できるサイト

同人の金子幸男先生からの情報です。


下のサイトで、イギリスの通貨の

金額と年代を入れると、

現在の通貨価値に換算してくれます↓






これは便利101.png


さっそく「イギリス文学に出てくる

気になる金額」を4つ、調べてみました。


小説は少し前の時代を描くことが多いけど、

シンプルに出版年を基準にして、


ポンドは為替変動が激しいので、

1ポンド200円として計算しました。




気になる金額その1 

ヴァージニア・ウルフ『自分ひとりの部屋』(1929年)

女性作家に必要なお金:年500ポンド=約410万円


「女性が小説を書こうと思うなら、

お金と自分ひとりの部屋を

持たねばならない」(第1章)


この主張で有名なエッセイ。

この「お金」の金額は、

具体的には500ポンドです。


410万ですと、

ボーナスが出る定職に就いていて、

そこそこ安定している感じでしょうか。


ただし、同人の片山亜紀先生が

「解説」で書いているように、

ウルフは世襲財産を想定してます。


ということは、

この500ポンドは、

創作の時間を確保するもの。


現代の日本の女性が

フルタイムで働いて得る

年収410万円より、

はるかに価値があるといえます。



ヴァージニア・ウルフ『自分ひとりの部屋』

片山亜紀訳、平凡社ライブラリー↓








気になる金額その2 

EM・フォースター『ハワーズ・エンド』(1910年)

マーガレット・シュレーゲルの年収600ポンド=約940万円


マーガレット(メグ)は、

未来の夫で、ビジネスで成功している

ヘンリー・ウィルコックスに、

彼の年収をずばりききます。



メグ「いくらあるのですか?」

ヘンリー「は?」

メグ「1年にいくらですか?私は600ポンドです」

ヘンリー「収入ですか?」

メグ「ええ」



不労収入で年940万円はすごい。

ヘンリーに年収をきくのもすごい。

自分の年収を言うのもすごい。


ついでに後で、

ヘンリーの元愛人が発覚した時、

寛容なのもすごい。


この4つのすごさは、

お互い関係し合っているのでしょうか?




気になる金額その3 

シャーロット・ブロンテ『ジェイン・エア』(1847年)

ジェインがもらう遺産2万ポンド=約24千万円

最終的に得るお金5千ポンド=約6千万円


ロチェスターとの結婚がだめになり、

ジェインは逃亡して、

村の小学校の教師として、

質素に自活していましたが、


突然ジョンおじさんの遺産が

2万ポンド舞い込みます。


同時に、自分に親切にしてくれた

リヴァース家の3きょうだいが、

ジョンおじさんの姪と甥、


つまりジェインのいとこと判明し、

4等分することにしました。



「4人はそれぞれ、

生活に困らない程度のお金を得たのです」


とジェインが言っている通り、


6千万あれば、

一生遊んで暮らすのは無理でも、

あくせく働く必要もない、

といったところでしょうか。


この後ロチェスターが

自分を呼ぶ声をきいて、

彼のもとに駆け付けるのですが、


宿の主人に


「すぐに馬車を手配して。

明るいうちにファーンディーンに着けたら、

あなたと御者の両方に、

普通の料金の2倍払います」


と、さっと提案できるのも、

お金があるからこそですね。




気になる金額その4 

ジェイン・オースティン『高慢と偏見』1813

ダーシーの年収1万ポンド=約9,300万円


この小説の肝は、主役のリジーが、

小金持ちじゃなくて、

大金持ちと結婚するところだと思います。


年収が1億近いなら、

「桁違い」の金持ちで、納得です。


リジーは確かに「紳士の娘」

かもしれないけど、

お父さんの年収は2千ポンド。


ダーシーはその5倍。


お父さんの5倍の収入の人と

結婚するのは、

玉の輿ですよね。




みなさまもこの便利サイトで、

いろいろ換算してみてくださいね。


by 川崎


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by eikokushosetsu | 2018-11-11 19:26 | 小説と芸術

Lakshmi Krishnan, Daniel Marchalik著「ハートブレイクを理解する―たこつぼ心筋症から『嵐が丘』へ」 

医学誌『ランセット』に掲載された、

『嵐が丘』のハートブレイクに

関する記事のご紹介です。


Lakshmi Krishnan, Daniel Marchalik,

“Understanding heartbreak: from Takotsubo to Wuthering Heights

The Lancet, vol.392, September 8, 2018.


ここをクリック


昔から芸術作品には、

心に衝撃を受けて死ぬという

現象が出てきますが、


医学の世界では、1990年代に、

日本人の佐藤光医師が、

強い感情的ストレスで

心疾患が起きるケースを


「たこつぼ心筋症」

Takotsubo cardiomyopathy

として報告しました。


心臓がたこつぼのような形になるそう。


エミリー・ブロンテの『嵐が丘』(1847年)では、

ヒースクリフが、別の人と結婚してしまった

愛するキャサリンに、こう叫びます。


おれはおまえのハートをブレイクしてない。

ブレイクしたのはおまえだ。

そしておまえのハートをブレイクすることで、

おまえはおれのハートもブレイクしたんだ。


ここでの「ハートがブレイクする」は

比喩に過ぎません。


体の丈夫なヒースクリフは、

この後キャサリンが死んでも、

何年も生き延び、苦しみ続けます。


でも18年経つ頃には、

キャサリンの存在を感じるようになり、

毎日会おうと努力します。


そしてやっと会えた!と思った時、

過度の喜びでハートがブレイクし、

翌朝死んでしまいます。


つまり小説の中で謎になってる

ヒースクリフの死因は、

「たこつぼ心筋症」だったのかも

しれないのですね。


奇しくも、日本人医師が見つけた

日本語の入った名前の病気で、

とても不思議な気がしますね。


話は変わりますが、

『ランセット』には、

博士論文作成中に、

お世話になりました。


1823年に創刊した、

Thomas Wakleyさんに感謝です。


農家出身の外科医

(当時は内科医より身分が下)の

ワクリーさんは、


『ランセット』で熱く

医療改革を訴え続けた

勇敢な兵士でした。


by 川崎


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by eikokushosetsu | 2018-09-19 23:41 | 小説と芸術

セント・パンクラスの夕べ(大石和欣)

大石和欣(同人)です。


今夏は渡英する予定がなかったが、調査の必要もありお盆前に急遽ロンドンへ飛ぶことになった。ブリティッシュ・ライブラリーのほかに、地下鉄ノーザン・ラインで南北に移動する必要もあり、 “Airbnb”でかろうじて残っていたカムデン・タウンにある安宿を借りることにした。ブリティッシュ・ライブラリーを北に向かって歩いて二十五分ほどのところに位置する。




カムデン・ロード

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実は以前からこのエリアの歴史に関心を持っていて、歩いてみたかったのでいい機会だと考えたのが投宿の理由である。さほど古い歴史があるわけではない。十八世紀末から急速に発達したロンドン北部郊外の一つである。もともとはケンティッシュ・タウンのマナーの一部でしかなかったのを、初代カムデン伯になったチャールズ・プラットが議会の承認を得て、一七九一年から開発業者に土地を提供し造成したものだ。宿泊したあたりにはありきたりのジョージアン様式の郊外住宅が、軒を並べている。




19世紀初頭と思われる郊外住宅

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だが、都市史において注目されるのは、すぐ南にできたエイガー・タウンである。十八世紀末にこの辺りの土地を購入したのがウィリアム・エイガーで、その名を冠した地域である。一八一二年から一八二〇年にリージェント運河が築かれた際に、自分の土地を横切ることに猛烈な反対運動を繰り広げ、許可の代わりに賠償金を手にする。その彼が一八三八年に亡くなると、未亡人がすぐに土地を開発業者に提供し、住宅街が造成される。ところが、二十一年という短い借地期間での土地提供は、開発業者にとって相当な安普請でもしないかぎり、コスト回収不可能な条件である。結果として、悲惨な生活環境の住宅街が造られ、スラム街としてヴィクトリア時代に悪名を馳せてしまうことになった。ついたあだ名が「おこり(ague)・タウン」である。




リージェント運河

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さらに、ミッドランド鉄道がロンドンに路線を拡張し、セント・パンクラス駅を構え、キングズ・クロス駅も隣に建造されると、鉄道敷設のためにこの辺りの住居は根こそぎ除去されてしまう。ディケンズが『ドンビーと息子』で描いた陰惨かつ破壊的な鉄道敷設工事の様子は、エイガー・タウンの状況が素材になっているという説は有力である。大げさに言えば、一夜にして街が線路の下に消えてしまったのである。詳細はジリアン・ティンドールの『地下に眠る野原』(GillianTindall, The Fields Beneath)に譲るが、郊外住宅として発達したカムデン地域全体も、鉄道敷設によってその面貌がひどく醜悪なものに変形してしまう。



二十世紀世紀に入ってもカムデンはけっして評判がいい地域ではなかったし、第二次世界大戦中にはドイツ軍の空爆(Blitz)も受ける。それでも戦間期にはカムデン・タウン派が印象派を独自に発達させた斬新な風景画を世に送り出したし、六〇年代からは新しい住宅区画エイガー・グローヴの建設がされ、七〇年代から現在にいたるまでマーケットを中心にサブカルチャーの「トポス」の一つとして、人びとを魅了している。



また二〇世紀末からは、セント・パンクラス駅北部の再開発の流れに乗って、エイガー・グローヴ区域はさらなる区画整備が進められている。カムデンからセント・パンクラスまで運河沿いに歩いてみると、エイガー・ロード、エイガー・プレイスなど「エイガー」の名を関した通りや地名は残るが、「エイガー・タウン」の残滓はもはやどこにも見られない。新しいフラットやオフィスが立ち並んでいるばかりである。




カムデン・タウン

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ふと気づくと目の前に古びた教会が見える。盛り上がった土地の上に、小ぶりだが由緒正しく品性ある趣きで佇んでいる。オールド・セント・パンクラス教会である。中世に起源を持ち、ノルマン時代風の石造りだが、実はその外観のほとんどは十九世紀半ばに改修・改築されたものである。ネオ・ゴシック様式が風靡していたヴィクトリア時代にあって珍しいネオ・ノルマン様式に改修された教会である。パーシー・ビッシュ・シェリーとメアリ・ゴドウィンが、メアリ・ウルストンクラフトの墓のある教会前の墓地で逢瀬を重ねて、駆け落ちした逸話もある。




オールド・セント・パンクラス教会

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カムデン・タウンとエイガー・タウン、そしてセント・パンクラスの歴史に想いを馳せながら、教会内の椅子に座って瞑想に耽っていると、いつの間にか夕方の礼拝が始まってしまった。古くは中世から、そして十九世紀の改修後も、脈々と継続されている日常の光景である。人は変われども祈りの姿に変わりはない。


礼拝後、外に出るとオレンジ色の夕日を受けながら二十一世紀の風景が目の前に広がっていた。ヴィクリア時代のスラムの一つは、目に見えない地下に安らかに眠っているのだろう。都市に霊魂があるとすれば、教会の礼拝はそうした埋没した街の鎮魂のためでもあるのかもしれない。秋の匂いがしはじめた風を受けながら、帰路についた遊歩であった。


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by eikokushosetsu | 2018-08-22 11:27 | 小説と芸術

ヒースクリフコンプレックスとジェイン・エアコンプレックス

BBCのサイトに『嵐が丘』の

ヒースクリフに関する記事が載りました。


Heathcliffand literature’s greatest love story are toxic


記事タイトルが示唆するように、

ヒースクリフは、

毒親ならぬ毒男。


悪いけど、魅力的な人。

いや、

悪いから、魅力的な人?


記事にあるように、

作家でのサマンサ・エリス氏は、

12歳でヒースクリフにはまり、


のせいで、実生活でも、

悪い男の人ばかり好きになって、

苦労したそう。


好きになってはいけない人を、

好きになる、


好きになっていい人は、

好きになれない。


こういう「ヒースクリフコンプレックス」

みたいなものって、あるんですね。


みなさまは、いかがでしょうか?



「ヒースクリフコンプレックス」も

あるところにはあるでしょうけど、


私は、自分と同世代の日本の女性には、

「ジェイン・エアコンプレックス」の方が、

身近じゃないかと、思ってます。


「ジェイン・エアコンプレックス」とは、

勝手に定義すると、


「真に愛する人と、対等な関係で、

コミットしなければならない」

という強迫観念のこと。


コンプレックスの症状は、


「真に愛する人」と

「対等な関係」の

両方の条件が揃わない限り、

コミットすることを回避する、


といったところでしょうか。



ひとむかし前のことですが、

あるセレブ女性が、愛読書として

『ジェイン・エア』をあげ、


「この小説は、

自分の心に正直になることや、

好きな人を信じることを

教えてくれた」


みたいなことを話していました。


その人は、ずっとお幸せそうなので、

『ジェイン・エア』は、

コンプレックスは形成せず、


よいお手本として、

励みや支えになったんでしょうね。


めでたし、めでたし。


by 川崎


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by eikokushosetsu | 2018-07-31 19:01 | 小説と芸術

洋書絵本 ジェニファー・アダムズ・文、アリソン・オリヴァー・絵、『嵐が丘』、『ジェイン・エア』

今日は、多分世界で一番かわいい、

『嵐が丘』と『ジェイン・エア』のご紹介です。


古典文学を使って、

子供に特定の語彙をおぼえてもらう、

Baby Litシリーズ。


例えば、

バーネットの『秘密の花園』では、花の名前、

キプリングの『ジャングル・ブック』では、動物の名前が、

学習できるように、なってます。


まずは、エミリー・ブロンテの『嵐が丘』。

特化してるのは。。。「天気」です。


Jennifer Adams. Art by Alison Oliver.

Wuthering Heights: A Weather Primer. Gibbs Smith, 2013


「jennifer adams, alison oliver, wuthering」の画像検索結果



この本は、9つの天気を選び、

原文から、該当する部分を抜き出して、

添えています。


9つの天気とは、


breezy

sunny

cloudy

windy

stormy

rainy

misty

snowy

still


です。


9つのイラストすべてに、

嵐が丘屋敷があって、


さらに、例えば「Sunny」だったら、

太陽が照っていて、お花が咲き、

女の子が、洗濯ものを外で干してます。


ブロンテ姉妹の小説で、どの気象が一番よく出てくるか、

調べた論文があります↓


Chesney, Rebecca. “The Brontë Weather Project 2011-2012.”

Brontë Studies 39. 1 (2014): 14-31.


この論文によると、『嵐が丘』で一番多いのは、

「風」で、20パーセント。

これは、イメージどおりかも。


2位は、「太陽」で、14.8パーセント。

少し意外?


ちなみに『ジェイン・エア』は「雨」、

アンの 『ワイルドフェル館の住人』は、「太陽」だそうです。

おもしろいですね。



次は、シャーロット・ブロンテの『ジェイン・エア』。


Jennifer Adams. Art by Alison Oliver.

Jane Eyre: A Counting Primer. Gibbs Smith, 2012


Jane Eyre: A BabyLit® Counting Primer (English Edition)


この本で勉強するのは、

数の数え方です。


ガヴァネスが、ひとり、

トランクが、ふたつ、

という具合に、10までいきます。


私が一番反応したのは、

「絵が、はちまい」の中の、パイロットのスケッチ。


パイロットは、ロチェスターの犬です。


パイロットは、

ジェインとロチェスターが初めて会った時も、

ロチェスターより先に現れ、


二人が一度別れて、やっと再会する時も、

主人より先に、ジェインに気づきます。


19世紀中期の小説では、

夫婦でもない男女が一緒にいるのは、よろしくない、

ということで、

犬がいることがありますが、

パイロットも、付き添い役を兼ねてます。


深読みすると、

難所の多い湾の中を、

港まで案内する「水先人」という名のとおり、


ジェインが無事に、

ロチェスターと一緒になれるように、

助けてくれる犬なのかも。


イラストのパイロットは、

体に比べて、頭、特に耳が大きくて、

まだ子供なんだと思います。


大型犬のパイロットにも、

小さい頃があったんですね101.png


アリソン・オリヴァー氏によるイラストは、

『嵐が丘』も『ジェイン・エア』も、


全体としては楽しい感じですが、

色が濃いめ、暗いめで、ゴスっぽいです。

ファッションでいうと、アナ・スイみたいな感じ。


細部も、葉っぱ一枚、本一冊、

どこをとっても、本当にかわいいです。


私の持っているのは、紙の本で、

ややマットな感じが、味になってますが、


電子ブック版は、解像度が高くて、

また違った美しさがあるのかもしれませんね。


以上、洋書絵本のご紹介でした。


by 川崎


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by eikokushosetsu | 2018-02-02 11:22 | 小説と芸術

きくち ちき 作『ねこのそら』(2015年)と『こうまくん』(2016年)

今日は、きくちちきさんの絵本を、

二冊、ご紹介します。



実際見ていただくのが一番ですので、

私の受けた印象を中心に書きます。


1冊目は、『ねこのそら』。


小さいねこと、

大きな木の話。



木の葉の色が変わっても、

木の幹は、ずっと同じ黒い色。



絵本にしては珍しい、

黒が目立つ本です。


読み進めるにつれ、

いつも変わらぬ幹の色は、

宇宙の色に、見えてきます。


それから、

生の最初の話であると同時に、

最後の話にも、思えてきます。


最後に、ある色が出てくると、

鳥肌が立ちました。



きくち ちき 『ねこのそら』講談社、2015年↓




2冊目は、『こうまくん』です。


こちらは、明るい色が、

ページいっぱいに広がる、

楽しい絵本。


こうまくんが、走るお話です。



こうまくんにとって、

走ることは、


できることであり、

しなくてはならないことであり、

やりたいことなんですね。


この本も、

最後に、ある色が出てくると、

本当にうれしくなります。



パワースポットみたいな絵本です。


きくち ちき『こうまくん』講談社、2016年↓




by 川崎


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by eikokushosetsu | 2017-12-03 19:02 | 小説と芸術

ノートン版『ジェイン・エア』とジュリア・マーガレット・キャメロン

ノートン版のシャーロット・ブロンテ作

『ジェイン・エア』が、

2016年に新しくなりました。


Charlotte Bronte, Jane Eyre.

Edited by Doborah Lutz.

Norton Critical Edition, 2016.↓




写真を撮ったのは、

ジュリア・マーガレット・キャメロン

Julia Margaret Cameron, 1815-1879)。


19世紀にカメラができてすぐに、

写真の芸術性を追求した人。


日本でも、2016年の夏に、

三菱一号館美術館で回顧展がありました。


『ジェイン・エア』の表紙モデルは、

メイ・プリンセプ

May [Mary Emily] Prinsep, 1853-1931)。


キャメロンの

実妹Sara

Henry Thorby Prinsep

実兄Charles Robert Prinsep

娘です(長い)。


両親とも亡くなり、11歳で、

SaraとHenry Thorby Prinsep夫妻の

養女になりました。


写真の発表は1866年なので、

モデルは、当時13歳くらい。


まだ蝶になる前の

サナギの雰囲気がありますね。


写真の題は「クリスタベル」(Christabel


クリスタベルとは、

ロマン主義の詩人コールリッジの

未完の詩「クリスタベル」の主人公です。


若く心優しきクリスタベルが、

困っている女の人を助けたところ、

実は悪い魔女で、

魔法をかけられてしまう話。


お父さんも狙われて、まずいことに。


メイ・プリンセプは、

そのクリスタベルに扮してるんですね。


キャメロンは、

身近にいる美人をモデルに抜擢し、

いろいろな人物にコスプレしてもらって、

写真を撮りました。


とはいえ、メイ・プリンセプの場合は、

頭部が大きく写った写真が多いそうで、

扮するキャラクターより、

彼女自身がよくうつっているともいえます。


(詳しくは、展覧会の図録

From Life ― 写真に生命を吹き込んだ女性 

ジュリア・マーガレット・キャメロン展』の

加藤明子「名もなき姪の面影 ― 

ジュリア・マーガレット・キャメロンの肖像写真」

をどうぞ)


ノートン版を編んだDeborah Lutz氏は、

この写真がジェイン・エアらしいと

思ったのでしょうか。

うら若く、愛想があまりない121.png感じとか。


または、『ジェイン・エア』と

「クリスタベル」の共通点を、

強調したかったのでしょうか。


生真面目な女性116.pngが、

恐怖に巻き込まれる135.png展開とか、

超自然的な要素や

性的な雰囲気もあるところとか。


それにしても、

この表紙は意外でした。


美人モデルを使って

美を追求したことで名高い

キャメロンの写真と、


イギリス小説初の

不美人ヒロインとして名高い

ジェイン・エアが、


どうにかして一緒になるとは

思わなかったからです。


ところで、

上の表紙をアマゾンで初めて見た時、

下の写真と間違えてしまいました。

こちらも本の表紙になってます。


Marta Weiss,

Julia MargaretCameron: Photographs to electrify you

with delight and startle the world.

MACK,2015.↓



写真の題は「ジュリア・ジャクソン」

Julia Jackson, 1867)


モデルは、結婚直前の

ジュリア・ジャクソン

(JuliaPrinsep Jackson, 1846-1895 

結婚してJulia Duckworth

再婚でJulia Stephen)


キャメロンの、実妹Mariaの娘です。



ジュリア・ジャクソンは

大変な美貌で、そのせいか、

仮装させず撮影した、唯一のモデルだそう。

(詳しくは図録の加藤氏の論文に)


既に21歳ですが、この写真では、

どことなくサナギ感も。


メイ・プリンセプと

ジュリア・ジャクソンに

血の繋がりはありません。


撮影時の年齢も13歳と21歳で、

かなり違います。


それでも、一見似ているのは、

この頃のキャメロンが、

美が成熟する前の、美人の顔に

関心があったからなのでしょうか。


ジュリア・ジャクソンの

美貌全開の写真もどうぞ。


題は「Mrs. Herbert Duckworth」(1872)


彼女が書いた本の表紙になってます。

Julia Duckworth Stephen:

Stories for Children, Essays for Adults.

Edited by Diane F. Gillespie and Elizabeth Steele.

Syracuse, 1987. ↓



彼女は、この後1882年に、

作家のヴァージニア・ウルフを生みます。


ウルフのエッセイ

「『ジェイン・エア』と『嵐が丘』」の抜粋は、

ノートンの新版にも引き続き、収められています。



日本ブロンテ協会↓


日本ヴァージニア・ウルフ協会↓


by 川崎


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by eikokushosetsu | 2017-08-21 11:31 | 小説と芸術