テレビ映画『ホロウ・クラウン 嘆きの王冠』

今日は、シェイクスピアの

史劇を映画化した

『ホロウ・クラウン 

嘆きの王冠』2012-16)の

ご紹介です↓


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付録の小冊子の

河合祥一郎先生の説明によると、


イギリス政府が、2012年の

ロンドンオリンピックに合わせて、

文化面でもオリンピックを

しようということになり、


BBCが請け負った

事業だそうです。


とても公的な作品なんですね。


7作品入ってます。


『リチャード二世』

『ヘンリー四世 第一部』

『ヘンリー四世 第二部』

『ヘンリー五世』

『ヘンリー六世 第一部』

『ヘンリー六世 第二部』

『リチャード三世』です。


私は真っ先に、最後の

『リチャード三世』から

見始めましたが、


王の病室の外で、

みんなで喧嘩するシーンで、

はやくも、誰が誰だか

わからなくなり、


順番通り『リチャード二世』

から見ることに。


最初につまずいたので、

次の4つを用意して、

のぞんだところ、

楽しめました。



1、付録のA3版の人物相関図

俳優さんの写真入りで、

わかりやすい。



2、付録の60頁あまりの小冊子

あらすじ、スタッフ紹介、

解説、専門家の対談など収録。


57頁からの、

松岡和子先生による解説は、

最初に読むとよいです。


私はここを読まずに

映画を見たので、


『ヘンリー六世』の

第三部がないよー、と


ディスクを収めるブックを

パタパタめくって探したり

(おばかさん)、


サマセット?サフォーク?

この人、どっちなのー、と

困ったりしたので。



3、河合祥一郎

『あらすじで読む

シェイクスピア全作品』

祥伝社、2013年。


一作ずつ、あらすじ、人物相関図、

作品の背景とポイント、

名台詞を収録して、

至れり尽くせり。


ヘビロテしました。


「あらすじで読むシェイクスピア全作品」の画像検索結果




4、原作の翻訳


今回は、白水uブックスの、

小田島雄志訳。


字を目でなぞるだけで、

意味が自然に

立ち上がってくれて、

楽ちん&楽しい。


うれしくなって、

『ロミオとジュリエット』と

『ハムレット』も読みました


「リチャード二世 白水」の画像検索結果




7作品中、私が一番傑作だと

思ったのは

『リチャード二世』。


今日はこれについて書いてみます。


何より、

主役のベン・ウィショーが、

すごい↓


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まずその顔。


ジョージ・エリオットの

『ダニエル・デロンダ』で、

ダニエルがグウェンドレンを

初めて見た時の気分。


見てはいけないものを、

見てしまった。なのに、

どうしても、

目を逸らせない。


眼球やくちびるの、

わずかな動きまで、

注目してしまう。


映画『さざなみ』で、

シャーロット・ランプリングが、

最後の最後に、

微妙な表情を見せて、

観客を凍りつかせましたよね。


あれ級の演技が、

ずっと続く感じ。


だから王の登場シーンでは、

常に緊張を強いられます。


アップで撮影できる

映画ならではの演出ですね。



次にウィショーの声。


長い母音を伸ばす時、

伸ばしてるうちに、

音程と音量が下がります。


demand」だったら

「ディ・マーン・ド」の

「マーン」のところ。


下がっても、

実害はないけど、


顔の表情と同じで、

何かとてつもなく

大きな運命の、

小さな兆候なんじゃないかって、


心配になり、


特に聴きたいわけじゃ

ないのに、

ついつい耳を

澄ませてしまう。



最後にその身体。

あばら骨が浮き出るほどの、

痩せた体。


黒っぽい髪とひげ。


みんなが濃い色の洋服を

着てるのに、

一人だけ、白っぽい

チュニック姿で、

文字通り、異色。


立って両手を広げると、

十字の形に。


牢獄では、

裸に白い腰布のみ。


そう、

イエス・キリストを

思い出させるのです。



原作では、自分をユダに

裏切られたイエスに喩える

ところはあるけど、


二者の関連は、

特に強調されてない。


この映画独自の

解釈なんでしょうね。



ただその前に、

もう一段階あって、


それは3世紀の殉教者の

聖セバスチャンです。


冒頭近くで、王が、

絵描きに、

聖セバスチャンの絵を

描かせているところが

出てきます。


裸の体を弓矢で射抜かれ、

血を流している、

有名な像がありますね。


あれを、

モデルがポーズを取って、

再現してる。


そこに王が近づき、

偽物の傷口からしみ出た、

偽物の血を指でなぞります。


宗教的というより、

性的なシーン。



ドビュッシー作曲

交響的断章「聖セバスティアンの殉教」、

2つのファンファーレ、交響組曲「春」

ダニエル・バレンボイム指揮↓


ドビュッシー:äº¤éŸ¿çš„æ–­ç« ã€Œè–ã‚»ãƒã‚¹ãƒ†ã‚£ã‚¢ãƒ³ã®æ®‰æ•™ã€ã€2つのファンファーレ、交響組曲「春」


終盤、

腰布だけ巻いた姿の王は、

洞窟みたいな暗い牢獄で、

弓矢で打たれます。


その姿は、まさに、

自分が制作させてた絵の中の、

聖セバスチャンそのもの。


王は、さすがに

イエス・キリストではなくて、

聖セバスチャンなのか、


と内心ほっとしていると、


最後の最後で、

棺に納められた

王の遺体から、


カメラがずーっと

上に移動して、


冒頭でも映し出された

キリストの磔刑像まで

行きます。


そこでやっぱり、

王が、

イエス・キリストと

繋げられてることが、

わかります。


そうすると、この映画に

さんざん出てきた「王冠」も、


この磔刑像の、

頭部の後光に、

思えてきます。


こうなると、

「愚かな王様」

(ごめん、リチャード)と

「王の中の王」が、


似てるのに違う、

違うのに似てることが、


強烈なアイロニーとなって、

嫌悪感をもよおします。


音楽でいうと、

同主調の

「長調の和音」と

「短調の和音」を、

交互に鳴らした時の、


内臓がねじれるような、

気持ち悪さ。


例:ハ長調(ドミソド)と

ハ短調(ドミソド、ミはフラット)。


ただここまで身体的嫌悪感を

引き起こせるのは、


この映画のパワーが

大きい証拠でしょうね。


ホラーやポルノ以外で、

強い身体的感覚を

引き起こせる映画って、

あまりないんじゃないでしょうか。


リチャード二世を見た後は、

ハル王子はもちろんのこと、


ベネディクト・カンバーバッチ

演じるリチャード三世でさえ、

かわいく見えたくらいです。


もちろん身体的嫌悪感は、

私の個人的な反応に

過ぎないのかもしれません。


まだ見てない方は、

ぜひご自分で

実験してみてくださいね。


『リチャード二世』についてしか

書けませんでしたが、

他の6つもよかったです。


内容は連続してるのに、

作品としての個性は違っていて、


どれか必ず、好きなものが

あると思います。


by 川崎


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by eikokushosetsu | 2018-05-30 18:37 | 映画と文学