マイク・リー監督『キャリア・ガールズ』(1997年)とエミリー・ブロンテ『嵐が丘』(1847年)

前回『マイ・ベストフレンド』について書きましたが、

マイク・リ―監督の

『キャリア・ガールズ』(CareerGirls, 1997)にも

『嵐が丘』(WutheringHeights, 1847)が出てきました。


この映画も、女性二人の話ですが、

『マイ・ベストフレンド』とは、

二人の関係や、『嵐が丘』の使い方が、

違っていて面白いので、ご紹介しますね。


「キャリア・ガールズ」の画像検索結果


『キャリア・ガールズ』は、

大学時代、ロンドンでアパートをシェアしていた、

ハンナ・ミルズ(カトリン・カートリッジ)と

アニー(リンダ・ステッドマン)の話です。


二人は大学卒業後、6年ぶりに再会し、

数日を一緒に過ごします。

その数日間と、大学時代の出来事が、

交互に描かれます。


二人の学生時代、

ハンナは、英文学専攻。

しっかり者で、性格はきつめ。


アニーは、心理学専攻。

心優しく、重めのアレルギー持ち。


ハンナは、自分で考案した占いを、時々します。


それは、エミリー・ブロンテの『嵐が丘』に向かって、

「ミズ・ブロンテ、ミズ・ブロンテ」と唱え、

「いつ彼氏ができますか?」などと質問し、


パッと頁を開いて、最初に見えた単語を、

答えとする占いです。


「ミス・ブロンテ」(Miss Brontë)ではだめで、

「ミズ・ブロンテ」(Ms Brontë)と

呼びかけなくては、なりません。


Ms」は未婚・既婚の区別なく、

女性の名前につけられますので、

ハンナは、女性を、

婚姻状態で区別したくないのでしょうね。


『嵐が丘』の本。

映画に出てきたのとは違う版ですが、大体こんな感じ↓

Emily Brontë, Wuthering Heights. Lulu.com, 2015.



再会した二人は、

豪華マンションを見学したり、

中華料理屋でディナーしたり、

昔住んでいたアパートを見に行ったりし、

最後に、キングスクロス駅で別れます。


回想される学生時代のところでは、

アニーがハンナのアパートに

越してくるところから始まって、


心理学専攻のリッキーと交流したり、

エイドリアンという男子学生と三角関係になったりし、

最後に、二人で泣きながら、アパートを引き払います。


ただ、ハンナとアニーは、いわゆる親友では、ありません。

学生時代も、ハンナがアニーの皮膚炎をからかって、

アニーが泣いてしまったり、


再会後も、アニーが抱えてきたお土産を、

ハンナがなかなか開けなかったり、

あれ?という感じです。


『マイ・ベストフレンド』のミリーとジェスは、

ソウルメイト的同志で、

きわどい冗談も言いますが、


相性が抜群によく、

自然に尊重し合える関係でした。


だからこそ、ミリーが病気になってから、

二人の仲が危うくなるところが、

ドラマになったんですね。


他方、ハンナとアニーの関係は、

友達というより、きょうだいに近いかも。


友達は、仲良くする必要がないのに、

一緒にいて楽しいから、一緒にいる関係。


きょうだいは、相性の良し悪しに関係なく、

偶然同じ家に住み、人生をシェアする存在。


同居人だったハンナとアニーは、

きょうだい的なのでしょう。

実際、卒業後は、6年会っていませんでした。


そして中華料理屋のディナーで、

アニー「私たちに乾杯!」

ハンナ「うん、ブロンテ姉妹に!」

と、自分たちをブロンテ姉妹にたとえます。


ハンナが占いに使う『嵐が丘』の表紙に、

エミリーの肖像画が描かれていたり、

語りかけるのが、ヒースクリフやキャサリンではなく、

エミリーであることは、


ハンナにとって、『嵐が丘』の内容そのものより、

作者が大事であることを、示しているのでは?


多分ハンナにとって、

ブロンテ姉妹は、理想の姉妹。


この後の会話でわかるのは、

ハンナには本物の姉妹がいますが、

アル中のお母さんが、

いつもその人をほめ、自分のことはけなすので、

関係がいま一つであること。


ブロンテ姉妹は、

もしきょうだいじゃなかったら、

どのくらい仲良くなったかは不明ですが、


実際は、きょうだいに生まれたので、

共に詩や物語を作る、

クリエイティブな関係を築きました。



アンドレ・テシネ監督『ブロンテ姉妹』(1979年)↓

今ブレイク中の、イザベル・ユペールも。

「ブロンテ姉妹 映画」の画像検索結果




BBCドラマTo Walk Invisible2016年)↓

誰が姉妹のどれか、わかりますか?

「to walk invisible」の画像検索結果



(映画をこれから見る方は、

この辺で読むのをやめた方がよいかもしれません)


キングスクロス駅で別れる時、

ハンナはアニーにプレゼントをあげます。

それは、懐かしい、あの『嵐が丘』。

エミリーの肖像画も見えます。


これを使い、久しぶりに、占いをします。

アニーの質問は、

「将来、本物の幸せをつかめますか?」


ハンナが、えいっと、本を開いて見つけた答えは、

「痛み」でした。


再会した二人が、

学生時代を回想する設定だったので、

ずっと、現在の二人の落ち着きが目立っていましたが、


最後の最後で、

これから長い人生を生きなければならない、

二人の若さが、

胸に迫るエンディングでした。


by 川崎


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by eikokushosetsu | 2017-11-23 09:44 | 映画と文学