ノートン版『ジェイン・エア』とジュリア・マーガレット・キャメロン

ノートン版のシャーロット・ブロンテ作

『ジェイン・エア』が、

2016年に新しくなりました。


Charlotte Bronte, Jane Eyre.

Edited by Doborah Lutz.

Norton Critical Edition, 2016.↓




写真を撮ったのは、

ジュリア・マーガレット・キャメロン

Julia Margaret Cameron, 1815-1879)。


19世紀にカメラができてすぐに、

写真の芸術性を追求した人。


日本でも、2016年の夏に、

三菱一号館美術館で回顧展がありました。


『ジェイン・エア』の表紙モデルは、

メイ・プリンセプ

May [Mary Emily] Prinsep, 1853-1931)。


キャメロンの

実妹Sara

Henry Thorby Prinsep

実兄Charles Robert Prinsep

娘です(長い)。


両親とも亡くなり、11歳で、

SaraとHenry Thorby Prinsep夫妻の

養女になりました。


写真の発表は1866年なので、

モデルは、当時13歳くらい。


まだ蝶になる前の

サナギの雰囲気がありますね。


写真の題は「クリスタベル」(Christabel


クリスタベルとは、

ロマン主義の詩人コールリッジの

未完の詩「クリスタベル」の主人公です。


若く心優しきクリスタベルが、

困っている女の人を助けたところ、

実は悪い魔女で、

魔法をかけられてしまう話。


お父さんも狙われて、まずいことに。


メイ・プリンセプは、

そのクリスタベルに扮してるんですね。


キャメロンは、

身近にいる美人をモデルに抜擢し、

いろいろな人物にコスプレしてもらって、

写真を撮りました。


とはいえ、メイ・プリンセプの場合は、

頭部が大きく写った写真が多いそうで、

扮するキャラクターより、

彼女自身がよくうつっているともいえます。


(詳しくは、展覧会の図録

From Life ― 写真に生命を吹き込んだ女性 

ジュリア・マーガレット・キャメロン展』の

加藤明子「名もなき姪の面影 ― 

ジュリア・マーガレット・キャメロンの肖像写真」

をどうぞ)


ノートン版を編んだDeborah Lutz氏は、

この写真がジェイン・エアらしいと

思ったのでしょうか。

うら若く、愛想があまりない121.png感じとか。


または、『ジェイン・エア』と

「クリスタベル」の共通点を、

強調したかったのでしょうか。


生真面目な女性116.pngが、

恐怖に巻き込まれる135.png展開とか、

超自然的な要素や

性的な雰囲気もあるところとか。


それにしても、

この表紙は意外でした。


美人モデルを使って

美を追求したことで名高い

キャメロンの写真と、


イギリス小説初の

不美人ヒロインとして名高い

ジェイン・エアが、


どうにかして一緒になるとは

思わなかったからです。


ところで、

上の表紙をアマゾンで初めて見た時、

下の写真と間違えてしまいました。

こちらも本の表紙になってます。


Marta Weiss,

Julia MargaretCameron: Photographs to electrify you

with delight and startle the world.

MACK,2015.↓



写真の題は「ジュリア・ジャクソン」

Julia Jackson, 1867)


モデルは、結婚直前の

ジュリア・ジャクソン

(JuliaPrinsep Jackson, 1846-1895 

結婚してJulia Duckworth

再婚でJulia Stephen)


キャメロンの、実妹Mariaの娘です。



ジュリア・ジャクソンは

大変な美貌で、そのせいか、

仮装させず撮影した、唯一のモデルだそう。

(詳しくは図録の加藤氏の論文に)


既に21歳ですが、この写真では、

どことなくサナギ感も。


メイ・プリンセプと

ジュリア・ジャクソンに

血の繋がりはありません。


撮影時の年齢も13歳と21歳で、

かなり違います。


それでも、一見似ているのは、

この頃のキャメロンが、

美が成熟する前の、美人の顔に

関心があったからなのでしょうか。


ジュリア・ジャクソンの

美貌全開の写真もどうぞ。


題は「Mrs. Herbert Duckworth」(1872)


彼女が書いた本の表紙になってます。

Julia Duckworth Stephen:

Stories for Children, Essays for Adults.

Edited by Diane F. Gillespie and Elizabeth Steele.

Syracuse, 1987. ↓



彼女は、この後1882年に、

作家のヴァージニア・ウルフを生みます。


ウルフのエッセイ

「『ジェイン・エア』と『嵐が丘』」の抜粋は、

ノートンの新版にも引き続き、収められています。



日本ブロンテ協会↓


日本ヴァージニア・ウルフ協会↓


by 川崎


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by eikokushosetsu | 2017-08-21 11:31 | 小説と芸術